底抜け脱線ぶろぐ@Unit Habanero


伝説のマグロ漁師・荒磯善次郎(あらいそ・ぜんじろう)。齢70にして、いろいろ現役。
陸では寡黙で穏やか、時に厳しい受。海に出れば、その名のごとく荒々しい攻。
男たちの憧れを一身に背負い、波から波へ、愛から愛へと、流れ流れて70年。

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日本の田舎に泊まろう!

――アッサラーム・アレイクム!

 アラブ某国国営放送がお送りする「世界の田舎に泊まろう!」、放送893回の本日はスペシャル編といたしまして、我が国第13王子殿下であらせられるルシュディー・ビン・ヤクザーン・アール・ハリーファ様が日本を旅する『日本の田舎に泊まろう!』をお楽しみください!


イーサ(以下イ) 「えー私達は以前殿下が大変お世話になったジャパニーズ、ゼンジロー・アライソへの返礼のために極東の地ジャパンに来ていまーす(棒読み)」
ルシュディー(以下ル) 「やめんか! その白々しい口調はなんだ! おい、私にハンディカムを向けるな!」
イ 「殿下……今回は国民に大人気の末の王子がお忍びで恩返し旅行ということで、皆様楽しみにしてらっしゃるのですから」
ル 「聞いておらぬ! だいたいなぜ王子の私が一般人に混じってフェリーなぞに乗らねばならぬのだ!」
イ 「いつものようにヘリなど使っては目立つではありませんか。今回はお忍びなんですよ?」
ル 「……お前、今本気で自分が目立ってないと思うのか」


――北海道・函館と青森県・大間を結ぶ高速船のデッキで、民族衣装に身を包んだ怒れるアラブ人を遠巻きに見守る人々。


イ 「大声を出して目立っているのは王子ですよ? 静かにしてください」
ル 「…………!!!(怒りのあまり口も聞けない)」
イ 「それはそうと、私が用意しましたゼンジローへの賜り物の目録に目を通していただけましたか?」
ル 「(渋々怒りを治め)……いいんじゃないか、あれなら。輸送の手配はどうなっている」
イ 「ぬかりはございません。ジャパンのお伽話によると贈り物は帰るときに『オキミヤゲ』してくるのが作法のようです。私達と入れ替わりにコンテナが届くよう手配してあります」
ル 「ん。……イーサ」
イ 「はい?」
ル 「……酔った」
イ 「殿下っ? お気を確かに…っ!?」

※津軽海峡は波が荒く、強い海流を避けて船が斜めに進むそうです。


――我らがルシュディー殿下は幾多の苦難を乗り越え、ついに恩人の住まう地に辿りついたようです。
感動の再会までチャンネルはそのままで!


ル 「(ぐったりと青褪めて)まだ地面が揺れているぞ……」
イ 「殿下……おいたわしい。まだご気分が優れなければ抱いていってさしあげますが(ウキウキを隠し切れず)」
ル 「いらぬわ!(あれ、耳が赤いですよ?)」


――港でメオト漫才を繰り広げる謎のアラブ人一行を通報するべきか否か、ヒソヒソ相談していた人々の間から、たくましそうなおばちゃ……もとい、女性に突き飛ばされて一人の青年が近寄っていくようです。


※ここからは自動翻訳でお送りいたします。

太一(以下太) 「あ、あのー俺、いや私は漁協職員の坂本と言いますが、こちらへはどんなご用件で?(あからさまにビクつく)」
イ 「コンニチハー(胡散臭い笑顔全開)この方は訳あって身分は明かせませんが、遠い国からゼンジロー・アライソに会いに来ました。彼はどこに行けば会えますか?」
太 「ああっ! じゃああなたが善さんが言ってたアラブのヤクザさん!?」
イ 「(こめかみに青スジが……)ヤ・ク・ザー・ンです。……あのクソジジイ、ただで帰すのではありませんでしたね(小声で)」
ル 「タイチとやら、それでお前はゼンジローの居所を知っているのか。ならば案内を頼みたい」
太 「それは構いませんけど……あ、ちょうど帰ってきましたよ!」


――どうやら沖合のほうから戻ってくる船団の中にルシュディー殿下のVIP、ゼンジロー・アライソがいらっしゃるようです。


太 「善さぁぁーん! アラブからお客さんですよーぅ!」
善次郎(以下善) 「おーぅ、太一ー! んん? あんたらフィリピンにおったアラブのヤクザさんでねえか。こっだらとこでなにしてんだ?」
ル 「うむ、ゼンジロー、その節は世話になったな。受けた恩は返すのが礼儀。遅くなったが礼をしに参った」
イ 「確かニホンゴでは『オレイマイリ』というのでしたね?(ニッコリ)」 
太 「そそ、それは違うと思います」(善さん、この人笑顔なのに黒いオーラが見えます……!)
善 「なんじゃ、アラブ人ちゅーのは律儀じゃのう! 気にせんでええに。まあせっかく遠いとこ来てもらったことじゃし、うち寄ってマグロでも食ってけ。今日はええのがあがっとるぞ」
ル 「いや、せっかくだが我らはマグロは口にできぬ。宗教上の制約でウロコのない魚は食べられぬのだ」
太 「ええっ、それは残念ですね。善さんの釣ったマグロは世界一なのに」
善 「お前ら……呆れたものしらずじゃのう。マグロにはちゃんとウロコがあるぞ」
イ 「殿下、私も存じておりましたが……」
ル 「ううう、うるさい!早く案内せい!」
太 「えええええ! ヤクザさんたちはともかく、大間の漁協に勤めてる俺は、相当恥ずかしいじゃないですかっ……!」


――さて港での感動の再会から場所を移して、おや? ここは個人の住宅にしては変わっているような?


善 「ここは銭湯じゃあ。ここらの漁師は海から帰ったらまずメシの前に風呂だんべ」
ル 「おぉ、公衆浴場か! アラブ人も風呂が好きなのでな、町ではみな利用していると聞き、私も一度入ってみたかったのだ!」
太 「へーっ、アラブの人も風呂好きなんだ。なんか意外」
イ 「殿下、本日は供に小姓を連れておりませんので私がお支度を」
ル 「仕方なかろう……だがくれぐれも人前で不埒な真似はするなよ」
イ 「もちろんですとも♪(殿下ったらテレやさんw)」



――ここはジャパニーズ銭湯の内部でーす。ここからはオトナの事情により音声のみでお送りします。
アラブの公衆浴場はたいていスチーム風呂で下着の着用が義務付けられておりますが、日本は浴槽になみなみと湯が満たされていますね。


ル 「ゼンジロー! そ、それはなんだ? 初めてみる形態だな」
善 「これか?これはフンドシちゅーてな、ジャパニーズトラディショナルパンツじゃ」
太 「ぜ、善さん!!(赤フン赤フン!)」
善 「それよりあんたらそのパンツはいて入るつもりか?」
イ 「ええ、アラブはスチーム風呂なので、湯舟に浸かることはまずありません」
善 「そんでもなあ、日本の風呂に浸かるんならパンツは脱がんとなあ」
ル 「わかった、郷に入っては郷に従えだな。よしイーサ、脱ごう」
太 「…………!!!!」
善 「なんだお前ツルツルじゃねえか」
ル 「…………!!!」(むしろフサフサにカルチャーショック)

※アラブの公衆浴場には三助のような人がいて、垢すりやマッサージの他に剃毛もしてくれるそうです。
アラブの成人男性は、ヒゲや眉毛など見える部分以外はツルツルなんですって♪



――その後案内されたゼンジローの家をシューズクロゼットと勘違いしたルシュディー殿下が、ゼンジローに客用スリッパではたかれ、逆上したイーサが剣を抜きかけるというハプニングがありましたが、楽しい時は瞬く間に過ぎ去り、やがて帰国の時が迫ります。


ル 「ゼンジロー、タイチ、世話になったな。返礼のつもりで参ったのに、すっかりこちらが楽しませてもらった。ああ、マグロも美味であった」
善 「いやなに、礼を言われるようなことでねえ」
イ 「いやいやゼンジロー殿のご厚情、感謝しきれるものではございません。つきましてはわずかばかりですが、感謝と記念の『オキミヤゲ』をご用意いたしました。こちらがその目録でございます。どうぞお受け取りくださいませ」
善 「悪いのう、こんな気を使ってもらって」
イ 「あ、おまちください。これはオキミヤゲですので、我らが帰るまでは見ないでくださいまさいね」



――「田舎へ泊まろうスペシャル!ルシュディー殿下の突撃お宅訪問♪」はいかがでしたか?
それではビッサラーマ!


++++++++++++++

太 「なんか……嵐のような人たちでしたねえ。ところであの目録何が書いてあったんですか?」
善 「太一よぅーこれはアラビアンジョークじゃないんかのう……」


+目録+
 1.ラクダ・馬・牛・豚=各30頭。
 2.ペルシャ絨毯=20枚
 3.金塊=10kg
 4.小型高速艇 etc.


 コンテナいっぱいに贈り物を積んだ大型貨物船が目前に迫るなか、善次郎と太一は、そこから聞こえる動物たちの鳴き声が自分の幻聴でありますようにと祈りつづけた。


Fin


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